PAPAとその娘 尾形亀之助
娘が蠟シンコを達磨の白いせと型につめてはピンでぬいて遊んでゐる
「PA・PA ちゆめて」
PA・PA は白いのをせと型にぎつしりつめて娘に渡した。
「PA・PA 白いから取れない」
PA・PA は白の上の白を取れないと言つた娘に、
この娘が生れて初めての敬意を表した。
娘よ! PA・PA はお前をためしたのではない。
偶然であつたのだ。
(銅鑼8号 大正15(1926)年月不明)
[やぶちゃん注:「白いせと型」は白色の瀬戸物で出来た抜き型のことを言っているのであろう。]
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今年最後のテクストは、このペースでいくと「尾形亀之助拾遺詩集」となる公算が強くなってきたことを予告しておく。
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