飲酒 尾形亀之助
私は酔つぱらつてどぶへ墜ちて頭をひどく打つた。肘や足をすりむいて着物は肩のへんから泥だらけになつた。曇つてはゐたが三日月の出てゐる夜だつた。
こんな態を飲酒家の中に馬鹿げたことだと思ふ人は一人もゐまいと思ふ。この仲間には自慢にさへなるかも知れない。
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(〈亜〉26号 大正15(1926)年12月発行)
[やぶちゃん注:二連ともに冒頭一字空けはない。]
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《塀の上の僕である黒猫のモノローグ:翻訳》
勘違いしないでおくれよ……(ニャーゴ グルゥゥゥゥゥ……)
これは尾形亀之助の詩であって……(ネーゴ ノワゥゥゥゥゥゥ……)
僕の日記じゃあ、ないよ!……(ワルルルルゥ! ギャン! グォロロ……)
僕はドブには、墜ちない……(ヌヮールルルル ギィ……)
墜ちるときは、墓穴の中さ……(ギィ ヴゥウウグゥゥゥゥ……)