無門關 十八 洞山三斤
十八 洞山三斤
洞山和尚、因僧問、如何是佛。山云、麻三斤。
無門曰、洞山老人、參得些蚌蛤禪、纔開兩片露出肝腸。然雖如是、且道、向甚處見洞山。
頌曰
突出麻三斤
言親意更親
來説是非者
便是是非人
*
淵藪野狐禪師書き下し文:
十八 洞山の三斤(さんぎん)
洞山和尚、因みに僧問ふ、
「如何か是れ佛。」と。
山云ふ、
「麻(ま)三斤。」
無門曰く、
「洞山老人、些(いささ)か蚌蛤(ばうかふ)禪に參得し、纔(わづ)かに兩片を開き、肝腸露はに出だす。是くの如ごと然ると雖も、且(しばら)く道(い)へ、『甚(いか)なる處に向ひてか洞山を見ん。』。」と。
頌して曰く、
突出す 麻三斤
言 親にして 意 更に親なり
來つて是非を説く者
便ち是れ是非の人
*
淵藪野狐禪師訳:
洞山和尚は、機縁の中で、ある僧から問われた。
「仏とは如何なるものですか。」
と。
洞山、言う。
「僧衣一着麻(あさ)三斤。」
無門、商量して言う。
「ヨイヨイ洞山老いぼれた。野狐禅飽いたと思うたら、ドブガイ禅をチト齧る。チビっと口を開(あ)くだけで、生の肝胆(かんたん)デロリ丸出し。さればこそ、こげな始末とあいなった、あ、あいなった、あん? あいなったと雖も、さればこそ! 己(おのれ)ら! 暫く言うてみよ!――一体、この中の、何処で、お前は洞山の、露わなキモを、真っ向、見据えたか!――さあ! さ! さぁ、言うみよ!」
次いで囃して歌う。
ぶっとんでるゼ! 「麻(ま)三斤(さんぎん)」!
誰でも分かる! 「麻三斤」! 心にやさしい! 「麻三斤」!
鵜の目鷹の目 寄って来ちゃ ああだこうだと云う奴は
悟りの「さ」の字も舐められぬ 呼んで嘲して『是非の人』!