無門關 二十一 雲門屎橛
二十一 雲門屎橛
雲門、因僧問、如何是佛。
門云、乾屎橛。
無門曰、雲門可謂、家貧難辨素食、事忙不及草書。
動便將屎橛來、撐門挂戸。
佛法興衰可見。
頌曰
閃電光
撃石化
貶得眼
巳蹉過
*
淵藪野狐禪師書き下し文:
二十一 雲門の屎橛(しけつ)
雲門、因みに僧、問ふ。
「如何ぞ是れ佛(ほとけ)。」と。
門云ふ。
「乾屎橛(かんしけつ)。」
無門曰く、
「雲門謂ひつべう、家、貧にして、素食(そじき)さへ辨じ難く、事(じ)、忙にして、草書するに及ばず。動(やや)もすれば便ち、屎橛將(も)ち來つて、門を撐(ささ)へ、戸を挂(ささ)ふ。佛法の興衰、見るべし。」と。
頌に曰く、
閃電光
撃石化
眼を貶得(さふとく)せば
巳に蹉過(さか)たり
*
淵藪野狐禪師訳:
二十一 雲門のカチ糞
雲門文偃(ぶんえん)は、機縁の中で、ある僧から問われた。
「仏とは如何なるものですか。」
雲門、言う。
「乾いたカチ糞の棒。」
無門、商量して言う。
「雲門文偃ちゅう奴は、家は貧しく、菜飯(なめし)さえ、味わうことも出来なんだ。年がら年中、他事多忙、小洒落た消息(たより)の一筆も、ものす暇さえあらなんだ。ともすりゃ、じきにカチ糞の、長~い奴を持って来ちゃ、門や戸ぼそへつっ支(か)い棒。仏法の興廃、この一線に有り! 見るべし、堅糞(けんぷん)の一策杖!」
次いで囃して歌う。
ピカッ! と 一閃 稲光り
ガキッ! と 一撃 火打石
瞬きなんぞ した日には
気づいた頃にゃ 大誤算