現詩壇に対する感想要望 尾形亀之助
一流大家でさへ詩では食つて行けないといふ事が事実であれば困つたことだと思ひます。詩作してゐることが不安だといふことが私達をどこまで危くするのか。女子供のためにばかり詩が存在するものだとすれば、私たちには何が与へられてゐるのか。
夢に詩壇の滅亡を見る。やがて詩人は亡び詩壇は仏壇となるのではあるまいかと、真面目にこんな事を言ふのさへ恥づかしい次第である。
私達は何物に力を借りなければならないのだらう。私は、編輯者及び出版者に一先づこの罪を嫁する。
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春日うらゝか。私は亡びゆく詩壇を前にして、てん/\と涙をこぼした。そして啞になつてしまつた。
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(文藝第五巻第四号 昭和2(1927)年4月発行)