無門關 四 胡子無髭
四 胡子無髭
或庵曰、西天胡子、因甚無髭。
無門曰、參須實參、悟須實悟。者箇胡子、直須親見一回始得。説親見、早成兩箇。
頌曰
癡人面前
不可説夢
胡子無髭
惺惺添※
[淵藪野狐禪師字注:「※」=「懜」-「夕」+(同位置に)「目」。]
*
淵藪野狐禪師書き下し文:
四 胡子(こす)、髭(ひげ)無し
或庵(わくあん)曰く、
「西天(せいてん)の胡子、甚(なん)に因りてか髭無き。」
と。
無門曰く、
「參は須らく實參なるべし、悟は須らく實悟なるべし。者箇(しやこ)の胡子、直(ぢき)に須らく親しく見ること一回にして始めて得べし。親しく見ると説くも、早(つと)に兩箇と成る。」
と。
頌して曰く、
癡人が面前にては
夢を説くべからず
胡子の髭無き
惺惺(せいせい)に ※(もう)を添ふ
[淵藪野狐禪師字注:「※」=「懜」-「夕」+(同位置に)「目」。]
*
淵藪野狐禪師訳:
四 胡子(こす)、髭(ひげ)無し
或庵禅師が言う。
「西天から到来された達磨大師、どうして彼には髭がない?」
無門、商量して言う。
「『参禅するということ』は、真実(まこと)の『参禅する』でなくてはならず、『悟るということ』、真実(まこと)の『悟る』でなくてはならぬ。このような、鬚なきゃ恥の西戎(せいじゅう)の、野郎についての話なら、一目親しく対面(たいめ)して、初めてはっきり分かること――『一目親しく対面す』と、謂うたとたんに、はや、お主、達磨と分かれて二人となって、『参』もなければ、『悟』も遠し。」
次いで囃して言う。
馬鹿な野郎の目の前で
夢を説いてはいけないね
――都市伝説――『達磨の面(つら)に髭がない』――
それを聴いているうちに 悟ったはずのこの頭 何だかすっかりぼんやりし 眠たくなってきたわいな