片山廣子への秘密の僕のラヴ・レター
今日は半日かけて昭和6(1931)年9月15日発行の改造社版『現代短歌全集』第十九巻に所収された「片山廣子集」のテクストを打ち込んでいた。そうして、あと数ページというところに至って、僕は確信したのだ――僕は、意を決して遂に廣子にラヴ・レターを書くことにした――
「片山廣子樣……あの『「翡翠」より』の歌群のことで御座います……貴女はあの時、巧妙に嘘をつかれましたね……隠したのですね、あの中に……濟みません、八十數年後の今日、それに氣づいてしまつた男が、ここにゐるので御座います……でも、僕は……貴女が亡くなつて52年、その今日……この手紙を確かに僕の戀の告白として送りませう……僕はストウカアではありませぬ故、厭なら厭と御返歌を頂戴出來れば、其れを以て、これ以上、御手紙を差し上げることは致しませぬ……いや、貴女と芥川樣の御関係を學術的に調べてゐた輩の内には……もしかすると已にして此の事を本當は知つて居た者もをつたのかも知れませぬ……されば、このやうに言上げせしことは、誠、愚かなリ、我心でありました……さればこそ此れは、僕の最初で最後の、貴女への告白の御消息となりませう……」
――僕は今日、夢で彼女の返事を聴くことに、する――
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