耳嚢 羽蟻を止る呪の事(☆既公開分を全文掲載方式に改造の上、ブログ・カテゴリ「耳嚢」創成した)
「耳嚢」に「羽蟻を止る呪の事」を収載した。
記事が25件を越え、ページで読むのが面倒な方のために、今回より、ブログでも楽しんで戴けるよう、こちらにも公開する方式に変更した。ついては、過去のものも総てそのように改造して、それぞれの記事をブログに表示、且つ、ブログ・カテゴリ「耳嚢」を創成した。偶々、今回のものは退屈な短編であるが、本頁に行かずに未だこれよりも前の「耳嚢」を未読の御仁は、どうぞ、過去の改造したブログでお楽しみあれ。
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羽蟻を止る呪の事
羽蟻出て止ざる時、
双六の後(おく)れの筒に打負て羽蟻はおのが負たなりけり
右の歌を書て、フルベフルヘト、フルヘフルヘト唱、張置けば極(きはめ)て止と、與住(よずみ)氏の物語なり。
□やぶちゃん注
・「呪」は「まじなひ(まじない)」と読む。
・「双六の後れの筒に打負て羽蟻はおのが負たなりけり」この双六は盤双六のことと思われ、そこで用いられる賭博用語や特殊なルールに掛けられた意味と類推するが、幾つか調べてみたものの、賭博やゲームと縁が薄い私には和歌の意味は全くの不詳、お手上げである。識者の御教授を乞う。
・「フルベフルヘト、フルヘフルヘト」不詳。底本では後者の三文字目には濁点がない。岩波版及びネット上の本記載を載せるページもすべて「フルベフルヘト、フルベフルヘト」となっているが、訳では底本を尊重した。骸子を「振る」と関係があるか? それとも梵語かポルトガル語かスペイン語か? これも完全にお手上げである(底本・岩波版共に本記事には注を附していない)。識者の御教授を乞う。
・「與住」先の「人の精力しるしある事」にも登場した与住玄卓。根岸家の親類筋で出入りの町医師。「耳嚢」には他にも「巻之五」の「奇藥ある事」や、「巻之九」の「浮腫妙藥の事」等にも登場する。
■やぶちゃん現代語訳
羽蟻を止めるまじないの事
羽蟻が出て止まない時、
双六の後れの筒に打負て羽蟻はおのが負たなりけり
という歌を紙に書いて、「フルベフルヘト、フルヘフルヘト」と唱えつつ、壁に張っておけば、一発で止む、とは与住氏の談である。