東亜文化大学教授 宗像伝奇樣 星野之宣先生気付
宗像伝奇(ただくす)先生、突然のお便りにて失礼致します。
先生の「鉄の民俗史」に多大な関心を寄せております在野の者で御座いますが、先生に是非、東インドのコナーラクにお越し願いたく、これをしたためました。
……ここには13世紀に造られた太陽神スーリヤを祀る神殿がありますが、それは巨大な7頭の馬と24の車輪が壁面を飾っています。この巨大寺院は、それ自体が太陽神が馬車に乗り天空を駆ける様そのものなのです……そして、その車輪には鉄が打ち込まれ、何より、その背後の失われた数十メートルあったビルディングのような本堂には「鉄骨」が用いられていたのです。現在もその鉄骨が境内に残されているのです。50年ほど前には、イギリスの統治下に途絶えていた太陽神に捧げる妖艶にして感性豊かな「オリッシーダンス」も復活しています。
それから、多分、先生お好みの信仰もここにはあるのです。コナーラクの海沿いの漁村は貧しいのですが、子どもたちに名を訊ねると、彼等はみな「スーリヤ!」と答えます。彼等は皆、太陽の子(てだのふぁ)なのです。漁師の妻は毎朝、砂浜に彩色した美しい砂絵を描いては、出漁する夫の無事を祈るのです。
恐らく先生の琴線に触れる素晴らしい旅となることと思います。どうか、新しい御研究のために、ここコナーラクへ来られんことを――
2010年1月 NGOコナーラク再生プロジェクト 派遣員 藪野唯好
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今夕、TBSの「THE世界遺産」2010年1月24日放送「コナーラクの太陽神寺院(インド)」を見ながら、これはもう宗像先生に来てもらわなくては、とわくわくして来たのだ。
星野之宣先生。
例えば……老考古学者の本堂復元……日本側スポンサーのリゾート開発思惑……青年漁師スーリヤと妻(勿論、先生の描くあの美形の)……砂絵……大津波……カタストロフ……しかし、スーリヤを祀る神殿が巨馬7頭の24の車輪を軋らせて(「ヤマタイカ」で大仏を動かされたように)、青年の舟に導かれてコナーラクの民を救って駆けるエンディング……
……なんてストーリーを、僕はもう、あなたの、あの絵のタッチで、そのテレビの画面の向こうに見てしまったのです……特に、漁に出る小舟の映像は、何故か涙が出るほど美しかったのです……