ハーレムと巨大ザリガニと「雨月物語」
ネタリナイノニネムレナイ――ダカラヘンナ夢ヲミタ――
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少年少女を侍らせて、自身は何も語らぬ教祖的芸術家(であるが何を作っているのかも定かではない)の元を友人のHに連れられて訪れる。
少年や少女は人懐こく、僕は浦島太郎のようにそこでいろいろなことを教えて(というより、ある言葉を示して黙示する)日がな一日優雅に暮らす。
家の裏手は急峻な崖となり、北から南へ蛇行した丁度その角が淵となっている。ふと、そこを覗くと、体長5メートルを超える巨大なアメリカザリガニがうようよ泳いでいる。振り返るといつも居る教祖がいない(このシチュエーションは教祖は淵の化け物であるという暗示かも知れない)。
僕の横にはアメリカザリガニの大嫌いなSが居る(彼が少年少女のハーレム染みたところに居るのは自然である)ので、僕は少年にかつてサルバドール・ダリの電話のダイアル機の上にロブスターが載った彫刻写真をガラス張りのテーブルの下に仕組んでSを恐怖させたこと(これは20数年前の事実である)を語って面白がる。しかし、Sは本物の巨大ザリガニに顔面蒼白である。
気がつくと、何日も絶っている。明日は山岳部のOBと山ではないか!(これは実際に3月に予定されている)
少年少女に別れを告げる。僕は先に教祖がくれた上田秋成の「雨月物語」の袖珍本を手にして出る(これは数年前、忘れられた磯子の古本屋で手に入れた五十年以上も前のものである)。しかしこの本、気がつくと前半分だけで後がない。
僕はあせりながら駅までの道を急ぐ。公衆トイレに入るが込んでいる上に、出ようとすると自動扉が開かない。僕はガラスを突き破って進む。
歩きながら、
「もう、家に帰っていては間に合わないな――よし、この着の身着のまま、革靴で山に登るしかない!」
と思う……トコロデ目ガ醒メタ〔覚醒時刻 今朝 4:44〕

