片山廣子訳 アイルランド伝説 カッパのクー
芥川龍之介の「河童」への密やかなオードである片山廣子のアイルランド伝説集訳から「カッパのクー」を「やぶちゃんの電子テクスト:小説・戯曲・評論・随筆・短歌篇」に公開した。本年2月になって入手し、なんとしてもテクスト化したかった作品である。本年の最初の目玉と言っても過言ではない。
作品の内容は淡々としたものである。コーダもアイルランドの垂直の断崖のように、すっぱりと断たれる。
――が――
……私はこのジャック・ドハルテに、ジューディ・リーガンに、そしてクーマラに……「影」を見る……それは勿論、ユングが示すところの「トリック・スター」でもあるのに違いないのだが……それはジャックであり、ジューディであり、クーマラであり、 「聖者の泉」のマーチンであり、メリーであり、「ゴドーを待ちながら」のウラジミールであり、エストラゴンであり、そして「河童」第二十三号であり、漁師の河童バックであり、霊媒師の口を借りるトックであり、芥川であり、廣子であるような多層的な「影」なのである……