やぶちゃん版芥川龍之介全句集 『2009年10月二玄社刊「芥川龍之介の書画」に現われたる句』追加 類型句2句及び新発見句2句
「やぶちゃん版芥川龍之介全句集」に『2009年10月二玄社刊「芥川龍之介の書画」に現われたる句』を追加した。類型句2句及び新発見句2句からなる。特に最後のものは慄然とする色紙であった。以下に、追加部分を総て示す。御覧あれ!
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2009年10月二玄社刊「芥川龍之介の書画」に現われたる句
[やぶちゃん注:以下は2009年10月20日発行の二玄社刊財団法人日本近代文学館編石割透解題解説になる「芥川龍之介の書画」に現われた新発見句並びに異同句である。【2010年4月25日】]
餅花を今戸の猫にかささはや 龍之介
[やぶちゃん注:類型異同句。同書資料番号64の短冊。解題によれば墨書で短冊は36×6㎝。同書資料番号65の別短冊も同表記(こちらは署名なし)。これ以外に解題解説に書誌記載なし。これは「餅花を今戸の猫にかざさばや」の濁音表記を省略した形で、「澄江堂雑詠」他の知られた既出形は「餅花を今戸のねこにさゝげばや」であるから有意に異なる。]
摺古木に山椒伐られぬ秋の風 龍之介
[やぶちゃん注:新発見句。同書資料番号77の短冊。解題によれば墨書で短冊は36×6㎝。これ以外に解題解説書誌記載なし。類型句はない。]
赤時や蛼なきやむ屋根のうら
[やぶちゃん注:既出であるが表記が特異。同書資料番号83の短冊。解題によれば墨書で短冊は36×6㎝。「あかつきや蛼鳴きやむ屋根のうら」の形で「我鬼抄」等に載り、「發句」「我鬼句抄」にほぼ相同の「「赤ときや蛼鳴きやむ屋根の裏」「赤ときや蛼鳴きやむ屋根のうら」(詞書はそれぞれ「病あり」「病中」)が載るが、「赤時」という表記初見である。「蛼」は「いとど」。]
迎火の
宙歩み
ゆく
竜之介
[やぶちゃん注:新発見句。同書資料番号90の色紙。解題によれば墨書で色紙は27×24㎝。これ以外に解題解説書誌記載なし。色紙左下に朱の落款があるが、篆書で私には読めない(「火」の字形を上部左には見る)。類型句はない。「龍之介」自体が署名でなく、第三句そのものである可能性も捨てきれない。さすれば鬼気迫る句柄と言えるが、新傾向俳句で「迎火の宙歩みゆく」で完結しているようにも見える。「竜之介」の筆致が明らかに前三行(これらは微妙に全体に右に傾斜している)とは一線を画して左に傾いているからである。何れにせよ、これは驚天動地、芥川俳句中、未踏の新発見句と言える。]
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