エンバーミング夢 又は ベルナデットの夢
僕の目の前に一人の裸身の少女の遺体がある。
体つきから少女は十二、三歳位だろうか? 顔面と前頭部が切り取られたように滑らかに損壊しており、顔は分からない。眼球や頭骸骨もその切片に従って消失していて、その断面は人体解剖図のように『美しく』全く不気味さがない。
――因みに、僕はその横たわった少女の遺体の傍らに立っているのだが、その周囲は青く澄んだ空である。即ち僕たちは空中に浮いているのである――
僕が少女の顔に覆いかぶさっている。僕は少女にエンバーミングを施している(それを僕自身が俯瞰ショットで見ている)。
僕が起き直る――すると少女の顔が修復されている――その少女の顔は神々しいばかりの――正真正銘の――蠟細工ではない――あの少女ベルナデットの顔である――
……と……そこで眼が醒めた。丁度、今朝の4時であった――
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□今日の夢へのやぶちゃんの注:
・エンバーミング:“embalming”。死体修復術。
・ベルナデット:Bernadette Soubirous(1844~1879)はフランスのLourdesルルドの泉で知られる聖母マリアを幻視した聖女。ベルナデッタとも。何故、僕がベルナデットを夢に見たか? その理由の一つは、もしかすると母と関係があるのかも知れない。私の母は、父が求婚するまでは、鹿児島のドイツ人神父の下でカトリックの教義を学び、修道院に入った後、四国岡山の長島にある国立ハンセン病療養所長島愛生園で奉仕をして生涯を終えよう考えていたのである。
――奇怪にして美しい夢であった――
――夢を書き始めたのが4時15分――その時は真っ暗で耳鳴りと扇風機の音だけだった――今は4時40分――満山、蜩の声である――