シリエトク日記6 ホエール・ウオッチングであわや拿捕
8月3日(火)
羅臼の宿が企画しているホエール・ウオッチングに出かける。宿泊客であったのと、妻が杖をついているために操舵室の直近の座席を確保してくれる。
国後が見える。昨日、知床峠から始めてみた瞬間……「これが、ロシア?」……という違和感がまず働いていた――小型クルーザーでずんずん進む――ますますその感がいや増してくるぞ。――
――案内の漁師が、マッコウクジラを発見して叫ぶ!
「12時! 1.8キロ!」
盛んに潮を吹いているのが肉眼でも視認出来る――エンジン全開! もうシルエットじゃない緑の国後の景色が双眼鏡の中に見えた。――ずんずん進む!――
「もう、800メートルも進んだら……越えちまう!」
と操舵手が舌打ちした。――場所が場所だから操舵室のGPSの大きな緑の画面が見えた。国後と知床の間――そのど真ん中に我々の船がいることが点滅するその画面から分かった――クジラか拿捕か!――エンジン・ストップ――その瞬間――
――僕の双眼鏡は、そのど真ん中にはっきりと最後の潜水のために尾鰭を水面高く跳ね上げたマッコウクジラの尾を捉えた――
先年、アイスランドまで行って見れなかったマッコウに出逢えた――
おまけに北方領土の政治的スリリングさも添えてだ――
与那国でけぶるかすかな台湾を見た時きゃ、こりゃ、外国だと思った……しかし、国後、こりゃあね、確かに日本だぜ……
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