鏡花夢
9月1日早朝の夢――
僕は佐渡の深い湾に面した料亭にいる――
僕はこれから泉鏡花先生を前にして芥川龍之介の「奉教人の死」を朗読することになっている――
うまくやれるかなあと思う――
どきどきしている――
先生はなかなか来ない――
……入り江は青黒く重たく横たわって……どうも台風が、来るようだ……
*
最近の僕は、実は、芥川龍之介の「奉教人の死」の朗読がしたくてしたくて堪らないのだ。文楽の太夫のようにやるのだ。昨年、数人の三年生に初めて試みたのだが、僕としては相応に満足の行く出来であったと思っている。佐渡は「耳嚢」に頻繁に現れる佐渡逸話の影響だな。鏡花は恐らく、その日の昼に、職場に置いてある「太陽」の鏡花特集の表紙写真の記憶であろう。それにしても、鏡花は芥川の「奉教人の死」をどう思っていたのかなあ。きっと、鏡花は好きだったんだんじゃないかなー、って漠然と思うのだ。