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2010/09/12

ウルトラQ夢

少年の僕(しかし心は確かに53歳の僕であることを認識している)は円谷プロを訪れている。昭和30年代のウルトラQ当時のプレハブの建物である。

[やぶちゃん注:僕は実際には円谷プロに行ったことがない。この奇妙なリアルさは総て往時の写真集の円谷特技研究所や映像資料から僕の脳内に構成された擬似的なものである。]

柔和な顔の円谷英二さんやごっついけど優しい一(はじめ)さん(円谷一)、そして金ちゃん(金城哲夫)は少年のような笑顔で、如何にも嬉しそうに、企画室から怪獣倉庫、特撮スタジオ等を饒舌に案内してくれる。

[やぶちゃん注:ここで金ちゃんが出てきた意味は分かる。僕は先週、所属している2年生の修学旅行に一緒に行かないことに決まった。単に県には全員を行かせる金がないからなのであるが(尚且つ僕は学年団最年長であり、行けば旅費は最高額になるのであろう)、ガマや佐喜間美術館や亀甲羅墓で生徒らと語り合い、美ら海やサンゴの苗の植え付けを一緒に体験するのをとても楽しみにしていた僕としては、如何にも寂しい決定であった(加えて言えば僕は修学旅行の係でもある)。そこで勢い、先週末の授業でも沖繩の話に脱線した。そうしてそこで必ず、僕が何度も言ってしまうのが、ウルトラマンは沖繩出身という金ちゃんの話であった。それがここで作用した。]

金ちゃんがこっそり見せてくれたのは、僕の知らない使われなかったQの準備稿の数々だった――特にびっくりしたのは台詞を殆んど暗誦出来る僕の大好きな虎見邦男脚本の「バルンガ」だった――しかし、それはぱらぱらっとめくってみると――僕のよく知っている決定稿とは全く異なった内容の「バルンガ」の初期稿だったのだ!――金ちゃんは――「ホントはいけないんだけど、それ、君にあげるよ。」――と言いながら、悪戯っぽくウィンクした。

[やぶちゃん注:これも表面的には説明出来る。先日、三年前現役で一橋に進学した僕の教え子が訪ねてきた。彼は今、往年のウルトラ・シリーズのファンとなっており、一頻りウルトラ談義に花が咲いた。そこで後日、僕の持っているウルトラQの「鳥を見た・・」(山田正弘脚本)の撮影用台本準備稿、彼が好きだという「宇宙指令M774」(上正さん(上原正三)の脚本は上質のサスペンスに仕上がっており、エンディングの味な終わりも忘れ難い。いや、忘れ難いのは、実はやっぱり一条貴世美実はルパーツ星人ゼミを演じた水木恵子さんの美しさであろう。僕の同年代にも彼女が印象的だったという中年親爺教員は実に多いのだよ)「宇宙指令M774」の準備稿及び決定稿、「バルンガ」の決定稿の4篇をコピーして贈った。その記憶が作用した場面である。ここでは僕と金ちゃんが教え子と僕と相互変換しているのである。なお、この夢の中で読んだ未使用シナリオのストーリーは、現存し僕の知っているレアな「UNBALANCE」用準備稿の何れでもなかったことは確か。ちぇ! 惜しいな! ちゃんと覚えときゃ、よかった!]

金ちゃんが薄っぺらい企画室の板戸の所に待っているように言って、外へ出て行った――外は――陽光のハレーションを起こしたそこは――沖繩のサトウキビ畑が広がっていた――金ちゃんが消えた、そのサトウキビ畑の中から――今度は人が三人出て来た――舞い上がる思いだった――だってそれは、あの星川航空のパイロット・キャップを被った万城目淳(佐原健二)と一平君(西條康彦) ――それに由利ちゃん(桜井浩子)だったから。

[やぶちゃん注:私はアンヌ隊員(菱見百合子)よりフジ隊員(桜井浩子)であり、スピンオフながら、妙な言い方だが、フジ隊員より江戸川由利子ファンなのである。残念ながらこれらの俳優さんにも僕は実際に一度も逢ったことはない。なお、上記のシーンは僕が以前に創作を考えた金城哲夫の自伝的映画のシナリオのエンディングに想定していたシークエンスである。そこでは風そよぐサトウキビ畑の真ん中に横たわった末期の金ちゃんを、サトウキビの間からウルトラ怪獣やブースカが出て来て涅槃図のパッチワークになるというものであった――。]

僕は緊張の余り、言いたいことも言えず、ただ呆然としていたが――三人とも満面の配役の笑顔で(彼らは昭和30年代のあの若さのままである)、少年の僕としっかり握手して呉れた。順に万城目さんと―― 一平君と――そして、ドキドキしながら大好きな、あの、お姉さんの由利ちゃんと――

――ところが――そのとき僕は如何にも深々とお辞儀したのだが――そのお辞儀をした瞬間に――僕は今の大人の僕に「変身」してしまい――ここが大事なところだが――「変身」して遙かに身長が伸びたために――お辞儀をした僕の頭部が由利ちゃんの右の肩に頬ずりをするような格好になってしまったのだ――

[やぶちゃん注:撮影開始時は桜井さんは未だ18歳であった。今の僕が女子高校生の肩に頬ずりしては――問題である。]

――と――桜井さんは(ここで彼女は由利ちゃんではなく女優としての桜井浩子になっているのが夢を見ている僕の意識に鮮やかに直感されたのが生々しい)思わず後ずさりをした――ここも大事なところであるが、この瞬間には僕は小学生に戻っているのであるが(因みにQの放映時、僕は小学校4年生であった)――そうして

「――こんなに優しい挨拶をされたのは、始めてよ――」

……それは皮肉な謂いではないのだが……しかし、優しい謂いでもないのである……彼女の表情は依然として口元は笑っていながら、あの彼女独特の眉の間の強い皺は何か妙な緊張を示していた……そうして彼女だけが、そこから去っていった――

如何にも気の毒そうな表情の一平君と困った感じの万城目さん――いや、この時、彼らも俳優西條康彦と佐原健二の顏に戻っていた――

……桜井浩子さんに嫌われたのでは、と悲痛な表情の僕に、西條さんは「う~ん、ロコ(桜井さんの愛称)は難しいからね……」と呟き、佐原さんは「じゃあ、僕らもスケジュールが詰っててね。」と一言言うと、あのQのオープン・カーに乗って砂埃を巻き上げながら、珊瑚礁の方へと走り去って行った――

《そのまま呆然と見送る僕の左半身バスト・ショットのアップがストップ・モーションとなってホワイト・アウト》

                  終

[やぶちゃん注:ここの最後に宮内國郎氏の、あの御馴染みの「ウルトラQ」のテーマか、「鳥を見た」のエンディング・タイトル・ロールのオリジナル曲がかかれば最高であったが(希望としてはゼッタイに後者)、残念ながら僕の夢には音楽がかかったことは、過去数えるほどしかないのである。]

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