感懐
今朝犬を散歩させ乍ら不圖考へた。左右云へば「こゝろ」に『世の中の何方を向いても面白さうでない先生』と云ふ台詞があつた事を。氣が附けば犬はすつかり元氣に私のずづと前を歩いてゐた。涼しい風が吹いてゐた。蟲の聲が聞こえた。遠くで寺の鐘が鳴つた。青年が一人神社で手を合はせてゐた。其時、私にはずつと昔の在りし日の先生の心持が何だか分かつたやうな氣がした。
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今朝犬を散歩させ乍ら不圖考へた。左右云へば「こゝろ」に『世の中の何方を向いても面白さうでない先生』と云ふ台詞があつた事を。氣が附けば犬はすつかり元氣に私のずづと前を歩いてゐた。涼しい風が吹いてゐた。蟲の聲が聞こえた。遠くで寺の鐘が鳴つた。青年が一人神社で手を合はせてゐた。其時、私にはずつと昔の在りし日の先生の心持が何だか分かつたやうな氣がした。