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2010/09/27

耳嚢 巻之三 狐附奇異をかたりし事

「耳嚢 巻之三」に「狐附奇異をかたりし事」を収載した。

  狐附奇異をかたりし事

 元本所に住居せし人の語りけるは、本所割下水に住居せし比(ころ)、隣なる女子に狐付て色々成る事ありし。日々行て見しに、彼狐附、隣の垣風もふかざるに倒れしを見て、あの家には小兒病死せん抔言ひ、或は木の葉の枯れしを見、何の事有、竿の倒るゝを見て、あの主人かゝる事有といひしに、果して違はざりしかば、いか成事やと尋ねしに、彼女答へて、都(すべ)て家々に守(もる)神有、信ずる處の佛神ありて吉凶共に物に托ししらせ給ふ事なれど、俗眼には是を知らざる事有と言し。

□やぶちゃん注

○前項連関:観世音霊験譚から狐憑きの霊言譚で連関。但し、ここでは根岸は、やや猜疑を持って記述しているものと思われ、私はそっけない表現に批判的なニュアンスを感じる。この程度の『予言』は事情通(噂好き)の者であれば、容易に為し得ることである。卷之二「池尻村の女召仕ふ間敷事」や、それに関わって私がテクスト化した南方熊楠の「池袋の石打ち」等、思春期に現われがちな似非『超能力』、宮城音弥にならって言えば、根岸の嫌悪する意識的若しくは無意識的詐欺の騙り霊媒師シリーズの一つでもある。

・「狐附奇異をかたりし事」底本ではこの標題の下に編者鈴木氏による『(底本ニハコノ一條目次ニアツテ本文ヲ欠ク。尊經閣本ニヨリ補フ。)』との割注がある。

・「本所割下水」「割下水」は一般名詞としては、木枠などを施さず、ただ地面を掘り割っただけの下水の意。ただ「割下水」だけでも、本話柄に現れる江戸から大正(関東大震災頃)まで現在の墨田区本所にあった南北二つの掘割(南の方は御竹蔵まで延びて北よりも有意に長い。何れも東の半ばで横川と交差し、横川町では更にその東端が横十間川に合流している)を呼ぶ固有地名としても通用した。

■やぶちゃん現代語訳

 狐憑きの者奇異なることを語った事

 以前に本所に住んでおった者が語った話。

……我ら、本所割下水に住んで御座った頃のこと、ある時、隣家の娘に狐が憑き申し、いろいろ奇妙なことが御座った。我らも暇に任せ、毎日のように様子を見に参りましたが、この狐憑き、例えば、

――隣の垣根が風も吹かぬにぱたりと倒るるを見ては……

「……アノ家ニテハ近々小児病死致サンゾ……」

なんどと言い、或いは、

――庭の木の葉がいきなり枯れたるを見ては……

「……今ニモコレコレノ事コレ起コル……」

と称え、

――庭の隅に立て掛けて御座った竿が、ある近隣の宅地の方(かた)を向きて、ふと倒るるを見ては――

「……カノ家ノ主人(あるじ)ニ於キテハカクカクノ一件コレ生ゼン……」

なんどと口走る……。

 しかし、それがまた、果して総て……言うに相違のう、起こって御座れば、我らも少なからず吃驚り致いて、

「これは、如何なることじゃ?」

と試みに娘――基、娘に憑いた狐――に訊いてみたので御座る。すると、

「……総テ何処(いずれ)ノ家ニテモ……夫々ナル守リ神コレ有リ……信ズル処ノ仏神コレ有リ……ソレ等ノ仏神ハ吉凶何レナルトモ……必ズコノ世ノ事物ニ託シ……我等ニ知ラセントナサレシ事ナレド……俗物ガ眼ニテハコレ……分カラザル事コレ有リ……」

とほざきまして御座る……。

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