エルモライの最後の日記 ミクーシ社会主義連邦共和国コルフォーズ崩壊
遂に儂はアルパカを飼えるようになった。
ところが気がついてみればミクーシ社会主義連邦共和国のコルフォーズ牧場は崩壊しておった――
2日前にオ・モコローゾフ伯爵夫人が儂の牧場を訪ねて来て下さったのが、最後じゃった――
ミクーシ社会主義連邦共和国は現在、41の国から成っておるように地図では表示されておるが、どの牧場も、もうかれこれ半年ほど前から、水飲み場も干上がって、野ウサギばかりが飛び跳ねているばかりじゃった――
それでも儂は、おもだった恩顧あるお方の牧場に種を播いたり、水を汲み入れたりして御座ったが――
もうそれも、飽いた――
じゃが儂はこの牧場を捨てぬ――たった独りの牧場は気楽じゃ――訪問者に気使いする必要もない――アルパカはペルー高地の産、ミクーシのコルフォーズで飼える最高級の動物じゃ――じゃから、もう、新しい動物を飼うためにしゃかりきになって育てる必要も、これ御座らぬ――金は……実に2200万ルーブリもあるからに、死ぬまで使い切れんわい――鴨撃ちにふらりとお出でになったまんま、ずっと100年もお帰りになんねえ御主人、ピョートル・ペトローヰッチ様を――ここでこうして、アルパカと一緒にお待ちしておろう……お帰りの時は、ペトローヰッチ様、アルパカの毛で儂がこさえた、あったけえ、帽子を差し上げますだ……
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注・ピョートル・ペトローヰッチは「猟人日記」の主人公の名。例えば僕の最も好きな一篇「生神様」(邦題は「生きた御遺骸」「生きているミイラ」等とも訳される)等で分かる。この冒頭には彼お抱えの猟師兼下僕であるエルモライも登場する。お読みでない方は、是非。

