Epigraphs Ketil Bjornstad
曇天の海辺だ――
浜辺のコテージではストックのハンカチをなくした少し滅入ったサティが、アプサント酒を飲み過ぎて少し陽気になったフランクと一緒に連弾をしている――フォーレはコントラバスの弦を外して傍の枯木に結わえた――
入り江の木蔭ではデュシャンがエルンストとチェスをしている――「王の入城」をしたエルンストに怒ったデュシャンが割れたガラスを投げつける――エルンストは数枚のシダの葉でそれをいなす――その傍らにイヴ・タンギーがパイプを吹かしながらマグリットの死んだ人魚の鱗を退屈そうに毟っている――
ドゥエンデに入ったアントニオ・ガデスと陰部丸出しのギリヤーク尼ヶ崎が岬の突っ端でランボーの詩を主題に踊っているのが遠く見える――隣りには、フェルディナン・グリフォンがダイナマイトを巻きつけたまま、手持ち無沙汰に魔方陣パズルの数字に頭を悩ませている――
と――その時――
フリードリヒの海辺を歩んでいた僧侶が――身を投げた!――
浜辺で焚き火をして、したたかに酔った三井弘次扮する遊び人喜三郎、一言、
「――折角の踊りを、チッ、ぶちこわしやがってぇ!――」
(拍子木が鳴って暗転)
終劇
*
このアルバム。昔の教え子が呉れた。この一ヶ月毎日、これしか聴いていない。以上は、そんな僕の孤独なディスクリプション――
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