ヤンデル教授最終講義 人類補完計画 大団円
今日、95分×2の「ヤンデル教授最終講義 人類補完計画」を終えた。これが三年生諸君への僕の最後の講義となった。
終えた後、特別教室を去ってゆく一人の男子生徒が
「ああっ、面白かった!」
と友人に思わず発したのを、僕は耳にした。
僕も本当に、心から楽しかった。
僕の教師生活の中でも――今日は最上の『僕も楽しかった授業』であったのだ。
受けてくれた50数名(! お前ら、ホント! 病んでるゼ!)の生徒諸君、君らは確かに僕の最愛にして、確かに最高の『最後の』教え子であったことをここに表明する。
言い忘れたこと――ヒト個体は遺伝子のヴィークルであるという事実だ――生物の「種の保存」と「進化」という生物学的な知見の中では、最早、我々の「個」という「存在」に大した意味はない。我々は遺伝子の乗り物に過ぎないのだとすれば、弁護士は妊娠した胎児に十全に「在る」のである――更に、女性を三人の排除対象に入れたあなたは明確に間違っている――(閉経が相対的に近いから年上の女性はどうか? とした女生徒の意見も、「閉経」という現実を認識するにうとい男子には思いいたらぬ鋭い指摘であったが――しかし、クローンを創るにしても卵子は絶対に必要なのだ! そうして子宮も絶対的にね!――だから女は総て生き残らせる必要が(数学嫌いの理系的国語教師である)僕には明々白々の必須の前提的事実であったということだ。最後に、牧師は――これは僕のディベートで眼から鱗であったはずだから、ここでは繰り返さない。
僕はもう思い残すことはない――
僕にとって「いっとういい授業」は、「僕にとっていっとういい」んだから――もう、ないんだ、ということをここに告解しよう。
君らは確かに――僕にとっての告解聴聞僧であった――
それでこその「大団円」であった――大団円は一度きり――それは確かにあったし、僕が君らを愛するという言辞は――確かに『真』であると信じよ!
――さようなら、そして幸(さち)あれ! 僕の君たち!
“Here's looking at your, kids!”
――君らの瞳に乾杯!

