バルンガ フラッシュ・バック 或いは 福島原発を見下ろす丘の上で
福島原発を見下ろす丘の上
奈良丸博士「災害? 大津波もメルトダウンも災害ではない。神の警告だ。」
僕「神ですって?」
奈良丸博士「君は洪水や山火事に竹槍やバケツ・リレーで向かうかね? 大津波は自然現象だ。原子力という火も人類が握った巨大なマッチに過ぎぬ。しかしたった一本のマッチからでも燎原は丸焼けとなる。文明の天敵というべきか。こんな静かな朝は又となかったじゃあないか……この気狂いじみた都会も休息を欲している。ぐっすり眠って反省すべきこともあろう……」
由利子「反省すれば救われるというのですか?」
老人答えない。
風船を空へ放し、見送っている。
*
病院の病室
僕「皆さん、あきらめてはいけない。散水車が近づいているんだ。きっと原発の火を吹き飛ばしてくれる」
奈良丸博士「神だのみのたぐいだ」
由利子「(むっとして)病人を力づけるために云ってるんだから、いいじゃないの!」
奈良丸博士「科学者は気休めは云えんのだよ」
由利子「じゃ、あなたは矢張り奈良丸博士?」
老人「(急に強い眼の光りで)だが、たった一つ望みがある……(自分に)わしは風船を飛ばした時、なぜこれに気づかなかったのか?」
*
僕は残念に思う。今ここに、僕らを救ってくれる風船も、奈良丸博士のような知恵を持った科学者もいないことを――僕らの現実の「ウルトラQ」は、太陽をバルンガが食ってしまう結末なのかも知れない――あの石坂浩二のナレーションに子供ながらに恐怖して、翌朝、空を見上げてほっとした少年の日を何故か今、僕は思い出す――
*
正しいシナリオはこちらを――
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