父さんと母さんとアリスと僕を少女の妻が写す
僕「やっとみんな一緒になれたんだ!――みんな――父さん、かっこいい! 母さん、りりしい! アリスのじいちゃんのエル、こうしてみるとアリス似じゃん! だからアリスなの!! 僕、なかなかの美少年だろう?! それだけで十分でしょうが! 僕の妻? う~ん、それはさ、これを撮っているのが、彼女だってこと、よ! これが僕ら五人(四人と一匹)の幸せさ! さあ! みんなで花見に行こうぜ!」
僕「なに? 撮った妻が分からないって? しゃあねえな! 見せてやろうじゃねえか! そのかわり、美少女だぞ! ハート・マーク入りだい! 見て驚くナ! え? 彼女を撮ったここは何処かって? えへへ! 僕は即分かったんだぜ! 何てったって、僕が昔、一人旅した唯一の場所だからな! 当ててみな! ヒントは――椰子――さ!」
僕「……母さん――さあ――出かけよう! いい男といい女――そして、母さんの息子の美少年と母さんの娘の美少女と一緒に! 文句を言う奴には、父さんが鉄拳制裁しちゃうから、大丈夫! 父さんのパンチは凄いんだゼ!――」
母さん「パパとたあちゃん! 飲みすぎちゃ、だめよ!」
僕の妻(さい)「母さん、言ってもだめですよ。私たちの作った梅酒を水でたっぷり薄めてごまかしまショ!」
(母と妻、桜の木蔭でこっそり笑う。父と僕はもう、桜の木の下ですっかり酔ってソヴィエトと中国と北朝鮮の問題で大声を張り上げて喧嘩している。)
――春の夜の夢――いや、春の夜の僕らの確かな現実の幸せである――
*
僕は、もう、恐いものはない――母が魂の中に、いるからね――