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2011/03/10

放蕩息子の帰還

以前に述べた通り、僕の母は独身の頃、修道女になろうと決心していた。イタリア人神父の洗礼を受けて笠井テレジア聖子となった。彼女は生涯を長島のハンセン病患者への奉仕で生きることまで予定していた。

昨日、母は呼吸が苦しいと言い始めた。それは病態の進行と、また心理的な強いストレスによるものとの両方が作用しているものと思われる。

先日、病院のスピリッチャル・カウンセラーである老修道女の「あなたはクリスチャンでらしたの?」という問いかけに母は「いいえ」と嘘をついていた。

僕がそのシスターに事実を話し、病床に招いた時、母はシスターの手を握って泣きながら「私は独身の時の戒律を破ってしまった放蕩息子です」と懺悔をした。

僕は懺悔をするユダに象徴される父なる神への放蕩息子の帰還の絵を、そこに目の当たりに見た気がして、驚愕した。――タルコフスキイの「惑星ソラリス」のエンディングで故郷の家の入り口で父に懺悔し縋るクリスと言えば映画ファンなら分かるはずだ――そしてそれは母でもあり僕でもあった――そうして、麻痺が急速に進みながら、79歳にしてその明晰な言葉と思索に私は驚いたのだ(これはALSの病態の特徴でもある。痴呆は起こらないのだ)。

実際、僕の妻はその「放蕩息子」の意味が分からなかったと後で僕に言った。

私の母の洗礼名は笠井テレジア聖子――今、入院している病院は聖テレジアという――私は神を信じないが――私の母の内なる神には、母の魂の平穏を是が非でももたらしてもらいたい――神よ、御加護を――

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