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2011/04/23

富田木歩 悲傷句群――聖子テレジアへ捧げる

以下は、結核によって死にゆく愛妹まき子への思いを悲泣痛切に詠んだ、僕が富田木歩第一の絶唱と信ずる一連の句群である。

今回の2011年5月号『俳句界』の僕の論考「イコンとしての杖」では制限された原稿枚数の中、ここに示した冒頭と末尾の句のみを挙げるに留めたが、やはりここに、その全てを敢えて掲げておきたいのだ。(引用は僕の「やぶちゃん版新版富田木歩句集」を用いたが、時間的連続性を重視するために一部の句及び新井声風氏の注・僕の注は省略した)。

……それは……この木歩が僕自身であり、まき子が僕の亡き母聖子テレジアでもあるからである……

  病 妹
和讚乞ふ妹(いもと)いとほしむ夜短き

  病勢の急に怠りし妹頻りに母の讀經をもとむ
今宵名殘りとなる祈りかも夏嵐

  病 妹
妹さするひまの端居(はしゐ)や靑嵐

戸一枚立てゝ端居(はしゐ)す五月雨

  病 妹 三句
晝寢守(も)れば螻蛄(けら)の聲澄む花菖蒲(しやうぶ)

寢る妹に衣(きぬ)うちかけぬ花あやめ

病む妹に夜氣忌みて鎖(さ)す花あやめ

夕むれの縁に螻蛄鳴く黐(もち)の花

花黐の蠅移りくる晝餉かな

  病妹惡し
醫師の來て垣覗く子や黐の花

ともすれば灯奮ふ風や時鳥(ほとゝぎす)

船の子の橋に出遊ぶ蚊喰鳥(かくひどり)

  病妹 五句
咳恐(おそ)れてもの言ひうとし蚊の出初む

たまたまの蚊に咳(せ)く妹を憂ひけり

かそけくも咽喉(のど)鳴る妹(いもと)よ鳳仙花(ほうせんくわ)

死期近しと夕な愁(うれ)ひぬ鳳仙花

床ずれに白粉(おしろい)ぬりぬ牽牛花(けんぎうくわ)

  病妹惡し
額上の汗に蚊のつく看護(みとり)かな

  病妹惡し
蚊遣焚いて瓶花(びんばな)しほるゝ愁(うれ)ひかな

蚊遣焚いて子を預りぬ洪水仕度(みづじたく)

臥す妹に一と雨ねぎぬ軒葡萄

  臨終近しとも知らぬ妹こまやかに語る
涙湧く眼を追ひ移す朝顏に

  納棺式
死装束(しにしやうぞく)縫ひ寄る灯下秋めきぬ

  忌中第一夜
線香の火の穗浮く蚊帳更けにけり

  通 夜
棺守(ひつぎも)る夜を涼み子のうかゞひぬ

鷄音しばしば讀經さそはる明易し

  妹の棺を送る
明けはずむ樹下に母立ち尽したり

朝顏の薄色に咲く忌中かな

昨日届いた著者献呈一冊を母の霊前に今朝供えた――

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