ピーター・フォーク追悼
6月23日に亡くなったのを知ってから、ずっと一言言いたかったんだ、ピーター。
僕は小学校3年生の時に「グレート・レース」の大ボケの小悪党マックス役のあなたに逢って、すっかり気に入っちゃったんだ。あの映画、史上最強のパイ投げ合戦が一番の目玉だったと思うんだけど、あのシーンよりジャック・レモン演じる爆笑のマッド・サイエンティストとの潜水艦の中の潜望鏡ギャク! もう46年も前なのに、映画館の中で大笑いする僕自身を、鮮やかに思い出せるんだよ。
その後は刑事コロンボ、きりっとスーツを着こなした、らしくない「殺人処方箋」から欠かさず見てた。
「二枚のドガの絵」の毛糸の如何にもな手袋はヤラれたね。
大好きなリチャード“キ印”ベースハート“提督”との競演の「ロンドンの傘」も同じく最後の摑みが最高だったね。
「魔術師の幻想」の火のコロンボ・マジックは溜飲。
映画ファンならその総て(展開も、ジャネット・リーの若き日の映像も、アリバイ崩しも)が垂涎の「忘れられたスター」――あれは、いいね、シリーズ中驚天動地の、コロンボが真犯人はグレースだと知っていながら、でも唯一、それをきっと最後まで黙っているんだろうなぁと感じさせる台詞――彼女を庇う大年のダンス・スターに答える『それが……いいかも知れませんね』――コロンボの情に涙した一本(ネタバレしないように最小限に発言は留めよう)。
でも、やっぱり一本だけ挙げろと言われれば――
ストーリー・配役ともに、僕は迷うことなく「別れのワイン」だね。
「ミクロの決死圏」「恐怖の植物人間」とマッド・サイエンティストを演じさせたら天下の権化、僕の熱狂的アイドル、ドナルド・プレーザンスが主演、
それに絡むのが、なんと僕の永遠の憧れジュリー“アブラ”ハリス!
彼女は、確か作中で映画好きという設定で、コロンボの尋問を、今夜はアラン・ラッドの映画を見るんだからと切り上げさせようとするシーンが如何にもシネマ・ファンを喜ばす。僕はちょい役の能面のような彼女の演技でも十分、「エデンの東」の面影にキスをした。
最後のドナルドとの車中の乾杯――あのワイン、僕もいつか飲みたいな。
――最後にあなたに逢ったのは「ベルリン・天使の詩」だったね。
そうか、天使に戻ったんだね、また――一足先に向こうに行った僕の母に、ピーター、また君の名演技を見せてやってね!
Peter“Columbo”Falk ! お勤め、ご苦労様!
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