山本幡男 辞世二句
[やぶちゃん注:遺書を書き上げた昭和29(1954)年7月2日から数日後、山本幡男は激しい眩暈と嘔吐に襲われる。急を聞いた新見此助が作業後に駆けつけた。その時、示された薬包紙に赤鉛筆で書かれた二句。これが現在、我々の知ることの出来る、山本幡男辞世の句である。]
日の恩や眞直ぐに玻璃の雪雫
藥瓶に柳絮舞ひ入る二度目かな
[やぶちゃん補注:「柳絮」は白い綿毛のついた柳の種のこと。また、それが春に飛び漂うことを言う。春の季語。それは幡男の心願の国、永遠の緑の――確かに心眼で見た祖国の春の到来であった――]