ホトトギス 土岐仲男
ホトトギス
人は会い訣かれるものと知りながら
このひとときのいとなみに
まことの生命(いのち)かけつくし
互に攻むる身のもだえ
互にみつむる涅槃境
また唇(くち)を吸い身を進め
ひとしほ強くかき抱く
長き捷毛の細き眸に
はやそのときをしるすとき
ゆめかうつつか何もなく
ただ白銀(がね)の高なりが
怒濤の如くわき返し
華火のごとく散り消ゆる
今はしづかに瞼閉じ
大きくもらす肩の吐息(いき)
互に充ちて二つ身に
ゆれもどりたるたまゆらに
ふと聞く雲間のホトトギス
[やぶちゃん注:「白銀」の「がね」は「銀」のみのルビで「しろがね」。「吐息」は二字で「いき」と読ませている。……先生、これは……もう、脱帽です!……]