母 半年忌 / エルモライの最後の手紙と写真帖
今日で母の逝去から半年が経つ。
半年忌という言葉が何故ないのだろう?
まあ いいや――
母さん もう 夏も終わる、よ――
*
エルモライからの最後の手紙――
「フヰヨドール様 今朝を以つて 農園と牧場と水槽を閉ぢまして御座いまする 農園の蓮と薔薇は故テレジア公爵夫人の香華と致し 牧場のアルパカとタヌキは野に放ち 水槽のテフテフウオとミヅクラゲは海へ戻して御座います 永年の御愛顧を感謝致し テレジア公爵夫人の御冥福とフヰヨドール様御家族一同の御多幸を御祈り致しまする
――隠居所と定めたるビェージンの野へと向かはんとせる馬車にて
元農奴 エルモライ」
*
エルモライ最後の写真帖
「水槽ノ思ヒ出」――今朝ノ最後ノ御家族
「牧場ノ思ヒ出」――テレジア様ヘ献上ノ最後ノアルパカ
「農園ノ思ヒ出」――今朝ノ解放直前ノ 狸囃子ニテ御座イマス
「最後ノ農園」――白キ蓮ノ中ニ故テレジア様ノオ好キダツタ赤キ薔薇ヲ植エマシテ魂送リト致シマシタ――今朝ノ農園ハテレジア様ヲ イヤ新タニ悼ム 涙雨デ 御座イマシタ……
*
エルモライへ――
「エルモライよ 私も
歸去來兮 田園將蕪胡不歸
――歸へりなん いざ 田園 將に蕪れなんとす――
と決した――
また 会おうぞ 友よ――
――母テレジアの半年忌に
2011・9・19
フィヨドール、ルカ・ヤブノヴィッチ・タダスキー」
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