鈴木しづ子 三十二歳 「樹海」昭和26(1951)年7月号の発表句21句から 7句
標題「夏みかん」総句数21。異例の多さである。――かの名唱の二句が初出する。『指環』所収句は14句。
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まみゆべし梅雨朝燒けの飛行場
頒ち持つかたみの品や靑嵐
俳句の病いである。
この句を戦中の句だと言えば、人々は誰もが涙し、英霊を思う――正しい制作年を示して「戦中」だと言えば、しづ子とその上の同時代人は一瞬にして顔を曇らし、胡散臭い視線を送る――作者は鈴木しづ子という、と発すれば、しづ子の名を何処かで聞いたことのある者は、したり顔に妙な笑いをして肯んずる――
俳句の病いである。
この冒頭二句は『指環』に所収する。
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夏みかん酸つぱしいまさら純潔など
いまさら句評など無効しづ子の純潔――
言うまでもなく『指環』所収。
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燈の薔薇はもつとはなやげ斯かるとき
「燈の薔薇」が今一つこなれない――次の句を並べれば、それは元来が詩語でなく、安っぽい即物でもあるかもしれない、しかし、それは問題ではない――これも俳句の病である――しかし、だから、いい。
『指環』所収。
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燈の笠に寒のあまおとつたふなり
凡庸とも言われようが悪くない。しかし、前句と並べば、前句の印象を完全な写生句に引き下げる。だから『指環』に採らなかったか。
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コスモスなどやさしく吹けば死ねないよ
先日、僕はこの名句をインスパイアさせてもらって、
花幻(はなまぼろし)秋櫻(コスモス)混沌(カオス)母逝けり
と、やらかした。
『指環』所収。
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倖うすき頤持つや蘭寒み
ゴッホの「病める子」だ――
『指環』所収。

