僕はもうじきバルンガになる
――怪物? バルンガは怪物ではない。神の警告だ。――
――君は洪水に竹槍で向かうかね? バルンガは自然現象だ。文明の天敵というべきか。こんな静かな朝は又となかったじゃあないか……この気狂いじみた都会も休息を欲している。ぐっすり眠って反省すべきこともあろう……――
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万城目「皆さん、あきらめてはいけない。台風が近づいているんだ。きっとバルンガを吹き飛ばしてくれる」
――神だのみのたぐいだ――
由利子「(むっとして)病人を力づけるために云ってるんだから、いいじゃないの!」
――科学者は気休めは云えんのだよ――
――(急に強い眼の光りで)だが、たった一つ望みがある……(自分に)わしは風船を飛ばした時、なぜこれに気づかなかったのか?――
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――(独白のように)間もなく、バルンガは宇宙へ帰る――
――生命にはいろんな形がある。バルンガは宇宙空間をさ迷い、恒星のエネルギーを喰う生命体なのだ。おそらく衛星ロケット・サタン一号が地球へ運んで来たのだろう。(自分に言い聞かせるように)二十年前には隕石にのってやって来た……――
――サタン一号には、私のせがれが乗っていた。いづれにしても、私には縁の深い怪物だったといえる――
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――バルンガは太陽と一体になるのだよ。太陽がバルンガを食うのか。バルンガが太陽を食うのか……――
* * *
奈良丸博士……僕は……バルンガに……なることにしました……