鈴木しづ子 30歳 昭和24(1949)年から 3句
この年は、「樹海」1月号に2句、3月号に11句が掲載されたのみで計13句。4月号以降はしづ子は完全に沈黙を守る。関某との結婚生活がどこで切れたかは不明である(なお、川村氏の精査によって戸籍に変更がなく、これは事実婚であったことが分かっている)。この年の末頃か、東京から岐阜に転居している。
*
關といふ姓の感じや寒櫻
林檎剥くややにそだつる妻ごころ
(「樹海」昭和24(1949)年1月号)
二句目は新妻の句として微笑ましいが、一句目は妙に改まった余所行きの「寒櫻」が、全体にややクールな印象を残し、僕には既にしてある影を感じさせる。
*
はこぶ箸のこる悔恨かすかにも
(「樹海」昭和24(1949)年2月号)
冒頭に記した通り、「かすか」に「のこる」だけだったはずの「悔恨」は増殖して膨れ上がり、この結婚生活はあっという間に瓦解する。

