鈴木しづ子 三十二歳 昭和二十七(一九五二)年三月二十四日附句稿二百十九句より(1) 六句
昃ろへば蝶翔たしむる玻璃の柵
いづれ指觸るるにあらず蝶は翔ち
蝶の軀の入いるにやすく玻璃のひま
玻璃透きて蝶は遠のくばかりなり
蝶翔ちて指とどかするすべもなし
ガラス窓にうっかり囚われた迷い来った蝶は、やさしいしづ子の手で自由を得て翔んでゆく――その自分のような蝶に、しづ子は、少しだけ触れてみたかった……でも……
激つ浪憶ひは距つばかりなり
その魂のディスタンスは――恋の不在を――厭がおうにも、しづ子に思い出させるのであった――
*
古来、蝶は人の魂であった……
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