鈴木しづ子 三十二歳 昭和二十七(一九五二)年一月二十三日附句稿百四句より (2) 音楽句二句(音源リンク附)
雪深しラ・モローチヤを聽く眠りしな
この夜の爐火アンネンポルカ愉しく聽く
「ラ・モローチヤ」スペイン語《La morocha》は「小麦色の娘」の意。1905年に発表されたエンリケ・サボリド作曲アンヘル・ビジョルド作詞になる著名なタンゴ。――ここで実際に聴きながら――しづ子の句を味わっては――いかがです?
「アンネンポルカ」《Annen-Polka》はヨハン・シュトラウス二世、一八五二年の作品。曲名は一般にはオーストリア皇帝フェルディナント一世の皇后マリア・アンナ《Maria Anna von Savoyen》に捧げられたことによるとされるが、一説には彼が音楽家を志すことに反対した父シュトラウス一世に隠れて、こっそりと音楽修行をさせてくれた母アンナ・シュトライム《Anna Streim》に感謝と愛情を込めて捧げられたとする説もある。――これは彼女を強引に支配した父俊雄と正反対であり、そんなワンマンな男の妻として苦労の中で死んでいった、しづ子の最愛の母綾子のことをも連想させる。尚且つ、この母アンナについてはその出自に諸説があり、宿屋の娘・料理店の娘・居酒屋の娘とも、先祖はスペインのジプシー(ロマ族)であるとか、いや、スペイン王国の貴族の末裔等々、様々に取りざたされている、まさにしづ子好みの女性であるとも言える。――ここで実際に聴きながら――しづ子の句を味わっては――いかがです?
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