鈴木しづ子 三十二歳 『樹海』昭和二十七(一九五二)年五月号掲載句全十二句
ことごとく人失せしめし霜の石(三月八日附)
地に置くも置かぬも古葉としての形り(三月八日附)
地の薪のいぶるかぎりをいぶらしむ(三月八日附)
春の日の草履袋を振りつつ振りつつ(三月八日附)
ランドセルがたごと櫻とつても綺麗(三月八日附)
驅けて驅けて下校の櫻吹雪かしむ(三月八日附)
いさぎよく切られてしまふ寒の竹(三月五日附)
寒過ぎの氷が混じる落し水(三月五日附)
この菊は半ばひらきてやみたるなり(三月一日附)
埋火のいまもひたひた燃えてあらむ(三月一日附)
疑へば疑はしくも簷氷柱(三月一日附)
あるだけの卵をゆでる春の晝(三月一日附)
各句の後に示したのが、採られた句稿の日附である(総て昭和二十七(一九五二)年)。前の私の撰した子らの句群と、そこから抽出してしまったここでの三句の印象の違いは明らかであろう。組写真のスラーな連続が断ち切られ、最早、モンタージュでさえなくなった、ばらばらの痩せた句になってしまっている。
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