鈴木しづ子 三十二歳 昭和二十七(一九五二)年三月八日附句稿二百十六句より(4) 三句
雪の夜の更けゆくばかり女人の居
居めぐりの昏れゆくほどの雪の増え
欝々と穹は在りけり雪怺へ
実はこの句は数句の前がある連作句で、その前の句群では、しづ子の家にある人物が訪れ、しづ子が聞きたくもない愚痴や嫌味を言い放題にして、雪の中をその人物が帰ってゆくまでが描かれている。その後の、一人になった後の三句(最後の句は翌朝か。若しくは全く異なる詩想に基づくものかも知れないが「欝々と」が明らかに前の連作を引きづって読めるところから敢えて採った)。「怺へ」は「こらへ」で、堪えるの意。煩瑣な下劣な日常の、如何にも愚劣極まりない事柄が、しづ子の孤独をいやにも掻き立てるさまが、如実に伝わってくる。
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