義母のこと
昨日、妻が名古屋から戻ってきた。義母は驚異的に好転している。と言っても、もう二ヶ月以上、口からは食物を摂取していない(下腿血管からのカテーテルによる栄養摂取である)。心筋梗塞で、心臓の働きも正常人の30%以下であることに変わりはない。
しかし――妻が、妻の妹の娘の来年の結婚の話を義母にしたそうだ――
看護師の彼女は「松原」という姓で、フィアンセは「林」という――
妻が妹の娘の姓が
「松原が林になるんだよ」
と言うと、義母はすかさず
「地所が増えるの」
と言ったそうだ。
素晴らしいジョーク! これは如何にも高度な洒落ではないか!
義母のアルツハイマーは進行していない、と僕は思った。
二日前には僕と携帯電話で話した。
一番、接触時間の短い僕を義母は何故か覚えていてくれていて、僕が
「逢いに行けなくてごめんなさいね」
と言うと
「たーちゃん、忙しいもんで」
と答えた。
彼女のアルツハイマーは全く進行していない。
母さん――もう一人の母さんを――今少し、守ってあげて下さい――
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