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2011/11/12

鈴木しづ子 三十二歳 昭和二十七(一九五二)年二月七日附句稿百六句より 七句

 本句稿には豊川稲荷・豊橋・富士(愛知県側からの眺望)・知多の羈旅吟を多く含むが、残念ながらそれらに佳句は少ない。

   *

 みづ色の春の雪舞ふ衣なりき

 句稿巻頭。昭和二七一月二十六日松村巨湫宛鈴木しづ子葉書。『お葉書有難うございました。お目にかかるのを楽しみにしてをります。水色の外套を着てホームの中程にをりますからさがして下さい。お氣をつけて行ってらしゃいませ。 二十六日 巨湫先生 しづ子』(川村蘭太「しづ子 娼婦と呼ばれた俳人を追って」三百三十七ページ所収)。先に記した昭和二十七(一九五二)年二月四日の岐阜駅での師巨湫との再会の句である。

   *

 春冷えの影長くして壺円し

 水仙ひらくひたすら円き壺の中

 銅版画のような印象を与える、清冽な陰影と質感である。

   *

 莫迦莫迦し蟬放たしむ指のひま

 理屈には倦みし蟬ごゑじつと聽く

 うち伏せばみなそこ浸る蟬のこゑ

 蟬のこゑ木曾のみなそこ透りけり

 蟬のこゑおのがいやはて想ひけり

 私は蟬の句が好きなのである。

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