鈴木しづ子 三十二歳 昭和二十七(一九五二)年三月四日附句稿三百五句より十二句
春愁の紙風船に息を詰め
春の夜の紙風船を疊めば反る
春の夜の天井觸るる紙風船
ぼんぼりに燈が入るころの双つ雛
火めぐりの灰を馴らしてただそれのみ
日永さの目立つばかりのなんてん葉
春燈下肉商人の指を缺く
空箱に絲など容れて春めくか
くりかへす子をとろ遊び夏はじめ
玻璃の面の蜘蛛は平たき餘寒かな
蟬しぐれ人を追ひ死すこともある
喪の家の沈丁匂ふ柵のうち
膨大な句稿であるが、アンビバレンツがなく、力の抜けた平板な句が多い。そうしたダルな雰囲気の中の垣間見た視線の、私の琴線が以上の十二句。最後の「喪の家の」は、句稿の掉尾で、柵の中に沈丁花を植えた或る棲み古した家を舞台に、家人が病いとなり、医師が向かい、死の家となる、アッシャー家の没落風の十七句連作の終曲句。連作としては興味をそそるが、一個の句としてはどれも今一つ。
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