鈴木しづ子 三十二歳 昭和二十七(一九五二)年三月十一日附句稿百六句より(3) 虫二句
この星の浮塵子の如く家郷なし
「浮塵子」は「うんか」と読む。カメムシ目ヨコバイ亜目Homopteraに属するセジロウンカSogatella furcifera、トビイロウンカNilaparvata lugens、ヒメトビウンカ Laodelphax stratellaなどの総称。稲の害虫とされ、時に大繁殖し、それが大群を成すことから「雲霞の如き」という語が生まれ、通称名となった。但し、「ウンカ」という和名の種はいない。なお、あまり認識されていないが、彼らはヒトを刺す。吸血するわけではないが、人によっては激しい炎症を起こす。侮らない方がよい。
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吾が指のてんたう蟲の越えし節
しづ子には昆虫や蛛形類の句が多いが、その接し方は鬼城より遙かに西欧近代的個人としてクールである。それが一種の気障な作為性を感じさせることもあれば、逆に斬新な心象として読む者をして激しく共感させることもある。因みに私はこのイメージ・フィルムのような一句が好きだ。
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