鈴木しづ子 三十三歳 昭和二十七(一九五二)年六月十五日附句稿五百四十六句より(14) 十四句
ひとごとと聞きながしつつ柿の花
おのが言おのれに還るや柿の花
世の人の眼の確かさよ柿の花
評さるる吾はここにあり柿の花
わが詩はわが詩なりに柿の花
香水やいつはりは亦美しく
香水やいつはりは亦難くして
香水や狎るれば僞言恥づるなく
告げ得ざる師へのいくつか梅雨めく雲
わが詩にいつはりありや梅雨めく雲
讀むひとの意の異りや梅雨燒けて
詩の意の曲げらるること梅雨燒けて
辯ぜざれば梅雨の夕雲朱かりき
離りきて師ぞしろしめす梅雨の雲
これは句集『指環』の齎した「しづ子」伝説へのしづ子の――半ば諦めた半ば尻を捲った――一つの感懐である――
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