鈴木しづ子 三十三歳 昭和二十七(一九五二)年六月十五日附句稿五百四十六句より(6) 八句
冷藏庫あがなひし折倖せに
冷藏庫の扉閉ぢつつ笑みしことなど
人還るおもひに棲めり食む氷菓
冷藏庫の扉開けては閉ぢにけり
過ぎ失せし愛の記念や冷藏庫
死によりて斷たれし愛や氷菓美し
嚙む氷菓うべなひ難き一つの死
國際愛とは氷菓にほどく厚き紙
「冷藏庫あがなひし折倖せに」の「あがなひし折」は底本では「あがなふし」、「嚙む氷菓うべなひ難き一つの死」の「うべなひ難き」は底本では「うべふひ難き」。訂した。冷蔵庫と氷菓を詠んだ十七句に及ぶハリー・クラッケ追悼句群の一つから。昭和二十二年頃から売り出された冷蔵庫はとんでもない高級品であった。川村氏によれば、しづ子がGIのハリーと同棲したのは昭和二五(一九五〇)年十月頃からと推定され、翌年五月頃には朝鮮戦争に彼が出兵、八月にヒロポン中毒なって帰日、即座にアメリカに帰国した。しづ子の一瞬の「倖せ」を思い出させる冷蔵庫と氷菓(自家製製造器によるアイスクリームかシャーベットであろうか)――哀しい「記念」(かたみ)であった――
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