鈴木しづ子 三十三歳 昭和二十七(一九五二)年七月五日附句稿二百七十四句より(10) 四句
驛へ驛へ學生つづく猛り鵙
おほかたの思想かたむく落花かな
統ぶるすべざる思想捲散る
學生やこころ一途に夏の雲
「おほかたの」の下五は底本「落花かふ」。訂した。学生運動の初期の映像である。しづ子も戦前の若き日にそうした集会に出たらしき「春燈下をんな學生混へつつ」という句を見た。しづ子は眼前のこの学生たちを、やや距離を置いて見ているようには見えるが、最後に掲げた句などには、やはりそこには一種の心情上の共感が感じられる。しづ子は決してクールな傍観者ではない。ただそこには常に現実から彼女が学び取ったところの、絶対善や自由の謳歌への疑義、相対的な現実世界の持つ胡散臭さを嗅ぎ取っているようにも私には感じられるのである。
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