鈴木しづ子 三十三歳 『樹海』昭和二十七(一九五二)年八・九月号掲載句全七句
これがしづ子の真の投句の掲載最終号の『樹海』である。しかし実際には巨湫の選句は直近の投句稿からは選んでいないから、これを『しづ子の真の投句の掲載最終号』とすること自体には余り意味はないと思うが、取り敢えず現象的事実として押さえておこう。句の後の括弧書きがあるものは例によって私が調べた投句稿所載のものである。後の五句は現存する投句稿には見出せなかったが、「雪降りをり県庁はいま正午にて」は昭和二十六(一九五一)年十二月十九日の投句稿に「寒月をのぼらしめたり惰性の生」という感懐類型句が見える。
揃えて脱げばスリツパ赤し降誕祭 (一月 二日附)
こころの疵からだの疵さむざむと在る玻璃の疵 (一月十一日附)
緑蔭の樹に凭しやすし凭れば歌ふ
夏の雲ゆく戰爭花嫁といふことば
紫雲英田に立てば山脈高からず
寒月照る着々と死を近づきしめ
雪降りをり県庁はいま正午にて
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