鈴木しづ子 三十四歳 『樹海』昭和三十(一九五五)年一月号しづ子詐称投句全掲載句
墓
わがことをひとびと言ふや麥の秋
麥秋やつねききながらおのがこと
知人なしやがて花もつ櫻の木
坐すや膝年賀のふみのひとつなく
つよからぬ體臭の衣すらも脱ぐ
ただ墓が穹のましたにならぶのみ
この句群は不思議にいい。それはまさにこの時期にあって――先の前年九月と十月の二号続きの巨湫に私物化された「しづ子」の後では――殊によい。私が当寺の『樹海』同人なら、まさにこの句群に、しづ子は投句を続けている、しづ子節は健在だ、と間違いなく思うであろう。しかし、それも巨湫の完全犯罪なのか。――そうして――確かにしづ子の眼は――死を見据えている――
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