鈴木しづ子 三十三歳 昭和二十七(一九五二)年八月二十四日附句稿五十五句より(1) 二句
劇藥の劇と銘うちまがふなし
密封する藥を持ちいつでも死ねる
劇薬を抽斗の奥に仕舞い込んだしづ子――それを透視するしづ子――その連作五句から。
最初の句は当然の如く、巨湫との謎の感応(秘められた官能というべきかも知れない)句
明星に思ひ返せどまがふなし
と響き合うように作られている。思い出さずにはおかせない、といった風に……こんなものを句稿として送られた巨湫はたまったものではないな……
――そうか? たまったものではないのは当然だ!
――たまったものではなかろうということをしづ子は十全に知っていて――
――しづ子は確信犯でこれを投句しているのだ――
――これを送られるべき――これを是が非でも当然読まねばならない義務が巨湫の側にあったからこそ――
――しづ子は――
――後妻との凡庸な生活人をぬくぬくと生きる巨湫にとって道義的に許されざる――
――選句されるべくもない赤裸々な自死志向句を詠み、送りつけたのではなかったか?……
――いや――それも恩讐の彼方であった――
――しづ子の句は今や――公案への答えである――
――幻の人生そのものを捨象するための――
――たかが/されど俳句――なのであった――
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