鈴木しづ子 三十三歳 昭和二十七(一九五二)年七月二十四日附句稿百五十八句より(4) 動物詠九句
金魚の屍迅き流れの川に葬る
近よれば幼き貌の冷やし馬
絶望にも徹し切れざる飛燕かな
蛇にして全身をもて遁れゆけり
跼み癖つねに地上の蟻殺す
蝙蝠を見し夜不吉に爪を切る
我が苦惱馬臭はげしき炎天下
炎晝の鳩降り下る石疊
蟬鳴く中見せ物小舍の紙はためき
「跼み癖」は「かがみぐせ」と読む。これらはしづ子の好むクロース・アップ手法がどれも効果的に利いた佳品である。特に私は「蛇にして全身をもて遁れゆけり」の厳しい描写力と無駄のない語彙選びに打たれる。
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