鈴木しづ子 三十三歳 昭和二十七(一九五二)年八月二十九日附句稿百八句より(1) 自死暗示二十句
夏を過しつ死といふことがめあてにて
いつでも死ねるグラヂオラスは咲きのぼり
死ぬるべきの藥ぞ箱裏む
劇藥の劇と銘うち暑氣極む
こん致死量の吾にあやまたさることを
歩一歩死へ近づき暑氣極む
秋たちぬ情死希いしことはむかし
雪はげし共に死すべく誓ひしことし
人死して降りしきるなり牡丹雪
雪霏々と愛は濃くなるばかりなり
雪霏々と吾らが一人死なせけり
吾らが愛雪くれないの染まむほど
雪こんこんおのが致死量まがふなし
月涼したんたんとして死を待てば
死にどこおろここゑがくや月に雲
ひつそりと死なむコスモス地を匍ひ
おのが死してのちの世を想ふ
死に神誘ふにあらず月澄みて
秋燈下粉末白く毒含む
夏らんらんいつでも死ねる藥を持ち
表記の不審なものもあるがすべてママである。
……しづさん……もういいでしょう……この頃から、巨湫はすっかりあなたが自死するかも知れないと思っていますよ……実際に彼は『樹海』同人の主だった者に、あなたの自殺の可能性を仄めかしてもいますから……しかし、ね……私は……しづさん……あなたは自殺なんかしていないね……それは私の願望なんぞを遙かに超えたものとして……不思議な確信に近い実感として……今もある、のですよ……
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