鈴木しづ子 三十三歳 『樹海』昭和二十七(一九五二)年十月号全掲載句
――以降、我々が見るものは巨湫によって仮構された存在しないしづ子『投句』である。但し、この十月号について言えば締切が八月末日であるとしてぎりぎりしづ子の投句時期内に入るが、選句された句は既に見てきたものと同じく、古い投句稿等から引かれており、その固有性を私は認識しない。――これ以降、我々は巨湫の俳句誌上稀に見る投句詐称史を見ることになる。私はこの『巨湫の犯罪』を最後まで漏らさず見届けたいと思う。
花の穹感激もなく雲流れ(四月十五日附)
くわりん咲くいづれは失せるべきわが手 (五月六日附)
手をとりて踊るルンバの螢光燈(五月六日附)
五月なり山羊は圍はれつつ育ち(五月六日附)
新緑の木曾の急流橋くぐれり(五月六日附)
はつなつや川面ながるる水の泡(六月十五日附)
河越の電車に在りぬ雲の朱け(五月六日附)
風鈴や醉へば唄うてつねのこと(六月十五日附)
遠山や五月の竿に衣ほす(六月十五日附)
生くるべし蝦夷はまつたき夏みどり(六月十五日附)
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なお、次号『樹海』昭和二十七(一九五二)年十一月号の掲載句五句は総て昭和二十七(一九五二)年九月三日『読売新聞』夕刊文化欄「新人抄」に『雲間の陽』として載った五句と完全に同じものであるから省略する。
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