「曽根崎心中」夢
昨日僕は「曽根崎心中」の夢を見たのである――
僕は德兵衛なのである……しかし勿論、むくつけき生の僕ではない人形の徳兵衛であるからして安堵されよ――
而して、それに遣い手はいない――
人形が自律的に動くのだ――
生玉社前の段に始まって天満屋の段まで――
僕はお初の足首で首を掻っ切る――
明りを消そうとするお初を僕は階段下からアオリで見た――
階段を堕ちるお初――
その横顔のアップ――
アアッ! そこで目が覚めてしまった!……
*
そんな夢が見られるもんかって?
見られるんだな! これが!
僕は栗崎碧の浄瑠璃人形を用いた稀有の映画「曽根崎心中」をロードショーで見てるからさ――
あれは今思えば――
凄い映画だったんだな――
――吉田玉男に吉田蓑助
――太夫は九代目竹本綱大夫に豊竹呂大夫
――三味は鶴沢清治
――おまけに主遣いも含めて総てが黒子、天満屋のセットを除いて、ロケだぜ! それも夜の天神森の(あの吉田玉男が蚊に刺されて閉口したというんだ!)!――
ああ……もう一度、見たい……え?……勿論、あの映画も、だけど……僕の「夢」の続きを……さ……
« ジョン・ミリングトン・シング著姉崎正見訳「アラン島」(14) | トップページ | ジョン・ミリングトン・シング著姉崎正見訳「アラン島」(15) »